今月の患者様インタビュー

■目に見えない病気
K・Nさん(73歳)  化学物質過敏症・電磁波過敏症

Q1:とてもはつらつとしておられますが、矢山先生から大変な闘病をなさったと聞きました。
体質など、病気をなさる前の事を教えて下さい。

[K・Nさん]
   私はとても元気で、主人と会社をやっていましたが、力仕事でも何でもバリバリやりました。病気で寝こんだ事はないし、健康には自信がありました 。

Q2:化学物質過敏症という病名ですが、発症のきっかけはどういう事ですか。

[K・Nさん]
   平成十三年五月に新築のマンションを買ったんです。主人が体をこわして病院に通うのに自宅からは遠いので、病院から近い所にちょうどマンションが建ったので二人で住んだんです。

Q3:新築の家では新建材や塗料など、化学物質の影響を受けやすいと言われますね。

[K・Nさん]
  はい。そうなんです。まず二週間目位から、エレベーターに乗ると、何か頭がへんな感じがして、おかしいなあと思っていました。仕方ないから八階まで階段を登っていました。
 でも二十日目から耳鳴りがはじまって。私は耳鳴りなんて知らないので、「頭がピーッていいます」と病院で先生に言いました。そしてCTを撮られましたが異常なし。脳外科でも原因が分からないと言われました。
 そしたら、大阪の妹が「それは化学物質過敏症だ」と言うんです。都会では「化学物質過敏症」の人がとてもふえていて、知らない人はいないと言いました。それで専門病院のK病院へ行きました。日本ではここが最も進んでいるという事でしたので。

Q4:そちらで診断と原因の特定ができたのですか。

[K・Nさん]
   そうです。三ヵ月待ちでした。原因はホルムアルデヒドでした。とくにホルムアルデヒドが、玄関と押入で高かったんです。私は押入に入れたふとんを畳の上に敷いて寝ていました。その部屋は換気もしていなくて、ホルムアルデヒドも高くなっていたんでしょう。
 主人はベッドに寝ていましたから、床から少し高いし、ふとんは押入に入れませんし、空気も入れ換わる部屋だったので、あまり影響がなかったのだろうと思います。

Q5:同じ建物でも部屋によってずいぶん違うんですね。
 それで、ホルムアルデヒドに対してはどのような対処をされたのですか。

[K・Nさん]
   K病院では検査だけで、治療はありませんでした。備長炭を部屋に置く事、朝の空気を吸って散歩をする事。プラスチック製品は使わない。という三つのアドバイスがありました。
 その頃は食事も摂れない位で、つらくて少しうつのような精神状態でした。K病院は一週間の入院で百万円かかるという事でした。部屋が空いていないのと若い人が対象という事で入院はできず、外来に通いました。とにかくびっくりしたのは、私よりずっと重症の化学物質過敏症の方がずらりと病院の待合室に順番を待っておられた事です。皆、とても厚いマスクを付けて、精気がなくて無表情でつらそうでした。本当に気の毒な状態で、大変なことが起きていると思いました。
 私もそうでしたが、触れるもの全てが恐ろしくて、厚いマスクをして世の中から隠れて生きていました。「治して下さい」「薬を下さい」と先生にお願いしましたが、ビタミン剤などを少し頂いた位です。

Q6:その後、K病院に通われたのですか。

[K・Nさん]
   いえ、三回行ったのですが、入院治療できるところをインターネットで調べてM病院というところへ行きました。そちらにはクリーンルームという、化学物質や細菌などの全く入らない部屋がありましたが、空きがなくてふつうの部屋に入りました。

Q7:そちらでの治療は如何でしたか。

[K・Nさん]
   実はそこで大変な事になったんです。MRIを撮って、電磁波過敏症まで起こってしまったんです。私は化学物質過敏症になってから何でも恐ろしくなっていたのでMRIの検査も不安でした。それで、もし、MRIの検査中に具合が悪くなったら、左手を挙げるから、その時はすぐ検査を中止するという約束で検査をしました。ところが手を挙げても止めるどころか、馬乗りになって動かないように押さえつけたんです。十分たってやっと止めてくれました。体がガタガタになりました。そして精神的にも大変なショックでした。それからは化学物質過敏症と電磁波過敏症の両方の苦しみを体験し、神経症とかうつ病とか言われ、何故こういう事になったんだろうと悔やんでいました。
 とにかく自分でベッドから起き上がる事もできず、介護をうけました。介護度I度の認定を受けていますから、どの位悪かったか、お分かりになると思います。もう何の望みもない状態でした。

Q8:それは本当におつらかったですね。Y・H・C・矢山クリニックをお知りになったのはその頃ですか。

[K・Nさん]
   そうです。私の状態を知った会社の者が「ヤヤマに行きなさい」って言うんです。「ヤヤマって何だろう?」って思いましたよ。その人がずっと原因不明の熱が続いていたのが、矢山先生のところに行って治療したらすっかり良くなったって言うんです。それで家の者にかかえられて、やっとの事で行きました。

Q9:大変だったでしょうね。車の中で寝た状態で、片道二時間位ですか?

[K・Nさん]
   はい、とにかく毎日のように通いました。子供達がずいぶん協力してくれました。都合の悪い時はタクシーに乗って介護の人についてきてもらいました。何としても楽になりたかったし、今まで頑張って働いてきたのでお金は体を治すために全部使ってしまっていいじゃないの、と子供達も言ってくれましたので。
 だいたい、今まで治療してくれる所がなかったんですから、なんとか治そうとして下さる病院はここだけなので、わらをもすがる気持です。

Q10:こちらでは、どのような治療をなさいましたか?

[K・Nさん]
   点滴と漢方薬です。体内にたまっているものを出す、というのが治療方針です。
 それから歯の治療をしなさい、と言われました。歯の奥に腐った骨があって、そこに感染が起きているのでそれを取ってしまわないと治らないと言われました。
 それで私はピンときたんです。病気で病院にかかった事はなかったけど、歯が悪くて二ヶ所の大学病院の口腔外科で治療をした事があったので、歯に問題があると言われてすぐ納得したんです。

Q11:それではすぐに歯科治療をなさったんですね。

[K・Nさん]
   はい、まずここへ来て点滴をして、帰りに○口歯科へ行って歯をやってもらいました。

Q12:私も勉強会でNさんの歯科治療の様子とその翌日のインタビューをビデオで見せて頂きました。顎の骨の深いところまで治療しておられたので翌日はかなり強い痛みがあるかと思っていましたら「スカーッとしました」「ちっとも痛くありません」とおっしゃっていましたので、びっくりしました。

[K・Nさん]
   本当に楽だったんです。もちろん顔は腫れ上がっていましたが、肩の上の重い石を下ろしたようで、痛いというよりスカーッと気持が良かったです。
 ○口先生も苦労されていましたが、よくやって下さいました。でも一回は金属をはずして下さった時、吸引が十分でなくて症状が悪くなった事がありました。その時は○口先生は化学物質過敏症について勉強不足でしたとおっしゃって、その後はまた十分気をつけてやって下さいました。

Q13:今回、入院して治療をなさっておられますが、如何ですか。

[K・Nさん]
   歯の治療をまとめてやって頂くために入院させて頂きました。入院時はものすごく厚いマスクをしてきたんだけど、恐る恐るでしたが、はずしてしまって、今は平気でさっさと院内はどこへでも行っています。点滴をしてもらってから耳鳴りもしなくなってすごく調子が良いです。こちらの歯科の先生はていねいな治療で咬み合せもとても上手だと思います。
 この前タクシーで一人で近くのショッピングセンターまで行ってきたんです。電話で娘にそう言ったら「えーっ」って絶句していましたよ。だって今まで一人で外出するなんて考えられない事でしたから。
 例えばスーパーだと、冷凍食品のところは電磁波がすごく強いし、化学物質もあちこちいっぱいなので行けなかったし、具合が悪くなるから誰かについてもらわないと、どこにも行けませんでした。
 自分でもウソみたいです。数ヶ月前までは一人でベッドから起き上がれなかったんですよ。
 化学物質過敏症になって四年目だけど、今からも良い時、悪い時はあるでしょうけど、でもなんとかやっていけそうだなぁって思っています。

Q14:今までの治療を振り返られてどんな事を思われますか。

[K・Nさん]
   お医者さんももっと勉強してほしいと思います。私は化学物質過敏症で苦労していましたが、もし電磁波障害が加わらなければここまで苦しまなかったと思います。M病院の先生は、最後まで私の症状がこれほど悪くなった原因がMRIのせいだとは認めてくれませんでした。本を読めばMRIを受けたあとに電磁波障害になった人の事がいっぱい書いてあるのに、きちんとそれを認めようとしない、誠実でない態度がとても残念で腹立たしかったです。先日、主人を亡くしましたが、化学物質過敏症だけの時は主人の介護をしていましたが、自分が寝たきり状態になってからは何もしてあげられなかったのがつらかったです。

Q15:化学物質や電磁波など目に見えない環境の汚染によって、いろいろな病気が起こっていると言われています。私達も便利な生活を送っていますが、環境を汚染している事にもっと注意を払って改めていかなければならない事がいっぱいありますね。

[K・Nさん]
   はい、私もたくさん本を読んで勉強しました。マンションの業者の人も換気の事をはじめに伝えるべきだし、情報をうやむやにしない事が大切だと思います。


※ホルムアルデヒド
揮発性有機物質(VOC)は、建材、家具、塗料など身の回りのさまざまな物から放散される揮発性の化学物質の総称で、合板の接着剤に使われるホルムアルデヒド、塗料に含まれるトルエンやキシレン、シロアリ駆除剤のクロルピリホス、プラスチックに含まれるフタル酸ジブチルなど多くの物質があります。
 VOCを長期間吸い込み続けたり、短期間に高濃度にさらされたことがきっかけで、ごく微量の化学物質でも頭痛、めまい、目の刺激感、息苦しさなど、さまざまな体調不良が現れるいわゆる「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」に悩む人が増えています。ホルムアルデヒドを含まない接着剤やホルムアルデヒドの少ない合板を選びましょう。

矢山院長のコメント

  K・Nさんは、化学物質過敏症、電磁波過敏症という、本態が不明とされ治療法も明らかでない病気で受診されました。
 K・Nさんのような難病、難治症の患者さんの治療に携わっていると、外界の環境汚染が体の中に気がつかないうちに入ってできた「体内環境汚染」が根本病因となっている事がわかってきました。水の中の金属や化学物質などの汚染、歯科金属から発生する電流とそれによる金属汚染、携帯電話、電気製品から発生する電磁波、食品や建材に含まれる化学物質や農薬、数えきれないほどの汚染源に我々は取りかこまれています。そのような複数の原因が複雑系と言われる生命体の中に入った時は従来の検査法では解析できない状態を呈するし、単一の薬剤で症状を消し去ろうとする治療法が効果を発揮できない状態になるのです。このような状態に対しては、生命体を正常な原点に戻すために、解毒療法を主とした治療が必要になってきます。解毒はdetoxification デトックスと言われ、代替療法や抗老化医学が盛んな米国においては重要な治療法の一つとなっています。K・Nさんはこの解毒を目的とした漢方の煎じ薬、数種類の薬剤の内服点滴を行いました。これで病状は少し改善したのですが、顔面や耳介の痛み、口の中に焼火箸を刺しこまれたようなと訴えられる痛みが続くため歯の金属をセラミックスなどに入れかえるだけではなく根本的な治療を行わざるを得ませんでした。歯の中の歯髄には神経と血管が入っています。齲歯(むしば)で強い痛みが生じた時はここに細菌感染、炎症が起っています。このためいわゆる「神経を抜く」治療が行われます。「神経を抜かれた歯」は失活歯と言われますが、いわば死んだ組織なのです。この歯の歯根部にはどうしても細菌が入ってきやすくなります。そして失活しているだけに痛みなどの症状が少なく気付かれにくいのです。この歯の治療は本当に難しいのですが、米国でこのための技法を学んでこられた○口○理先生にお願いして治療する事ができ、びっくりするようなよい結果を見る事ができました。治療の仕上げは当院に入院され、三十日間、食事療法や気功訓練も行った結果体重も五Kg減り、病気をする前と同じくらい元気と本人が言われるようになりました。ここまで来るには「死んでたまるか」と口にされたような御本人の強い意志と御家族が遠方からの通院をサポートされた努力が大きな力を持っていた事も忘れられなく、心のあり方の大切さを学ばせて頂きました。