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ほんとうのことが知りたい ほんとうのものをつくりたい2

2017/11/22/(水)

それで、質問することを探しては池見先生の教授室をたずねて、いろいろな疑問、人生の疑問も含めて質問するようになった。池見先生はお忙しい中、まったく嫌な顔をもせず、何でも答えてくれました。私にとって、これが人生について考え始めた大きなきっかけだったと四十年以上たって思い出される。少し紹介しよう。


「先生、人はどうしてみな真実を追究しようとしないのでしょう」
池見先生「人生には、誰でも三回は大きな困難や変化がおきるんです。その時にどう考えるのかが大切なのです。元気で何不自由ない時は、真実を追究したいとは思わないのですよ」


「先生、患者さんや医師はどうして心身医学の勉強をして、心の方からも病気を治そうとしないのでしょうか」
池見先生「易行(いぎょう)に見えて実は難行(なんぎょう)、難行に見えて実は易行ということがあるのですよ」


「先生、人はどうしたら悟れるのでしょうか」
池見先生「悟りには、大悟十八、小悟数知れずと言って、小さな気づきから、人生が変わるような大きな気づきもあるのです。大悟がすぐに起こらなくても、小さな気づきに気づくことが大切なんです」


「先生、ある友人が、新興宗教に入っていて、僕を何度も勧誘してくるんです。何回か集会に行ってみたんですが、誰と話しても答えがほとんど決まっていたのでおもしろくないんです」
池見先生「人間は、人生の疑問に対して、何らかの公式を教えてもらって、それに当てはめて問題を考えると、とりあえず答えがすぐに出て、一見アタマが良いように見えるし、安心できるんです。しかし考えがこり固まると新しいことが入っていきにくくなりますね」


「先生、同じ病気に同じ薬を処方してもよく治る人と、なかなか治らない人がいるのはどうしてですか」
池見先生「それは医師のセラピューティックセルフといってどういう態度、考えで処方するかで治療の効果が違うのですよ」

などなど実に様々なことを教えてくれました。


 私は自分一人で池見先生の教えを聴くのはもったいないと思い「診療内科を学ぶ会」を作って友人十数名に声をかけて、池見先生に講義のない毎週水曜日の午後に特別講義をしてもらうようになった。自律訓練法、手指の温度をフィードバック訓練によってあげること、脳波のフィードバック訓練、箱庭療法、心理面談の基礎など一年間に様々な診療内科の勉強を教授から直接に手ほどきされたのだった。池見先生は一年後、「君たちは、心療内科の研修医のレベルまで勉強したことになる」と言われた。

 私は、心療内科の医師になろうと思っていたのだが、心療内科を学んでいくと、この学問は他の内科と同列に存在しているのではなく、どの科にも必要必須なものだと思えてきた。人間が心をもつ存在である以上、身体だけを治癒しても本質的な治癒に至らない、池見先生はそのことを「心身一如」の医学と言われていた。心療内科の医師として自立するには、身体の医学をしっかり学ぶ必要があると思い、様々な科をローテーションで学ぶことができる福岡徳洲会病院で卒後研究をすることにした。(つづく)